オンワードホールディングス株式会社取締役 吉田 昌平様

アパレル, 製造業, 小売

組織人事領域の伴走型支援をご利用頂いている、オンワードホールディングス株式会社の吉田取締役に、グループの事業展開や中途採用で求めている人財像、ソリューションの感想などを伺うインタビュー機会を頂戴いたしました。

第一部:事業の全体像と沿革

志村
本日はお忙しいところ、インタビューの機会をいただき誠にありがとうございます。どうぞよろしくお願いいたします。
それではまず、貴社と事業についてお聞かせいただけますでしょうか。
吉田様
弊社のミッションステートメントは「人と地球に潤いと彩りを」であり、生活文化創造企業として、ファッションやライフスタイル、ウェルネスに関連する商品やサービスをお客様に提供しております。
志村
IR資料なども拝見し、事業のご発展を感じております。特に注力されている事業やブランドがございましたら、お聞かせいただけますか。
吉田様
当社は、創業者の樫山純三氏が大阪に創業した「樫山商店」から始まりました。
その後、紳士服の既製服を中心に事業を拡大させていき、1960年代には、日本の高度経済成長を背景に急成長し、日本を代表する紳士服メーカーとしての地位を確立しました。

1990年代に、様々な競合がひしめく中、婦人服事業を拡大するために、『組曲』を皮切りに、『23区』『ICB』などを立ち上げ、百貨店を中心に順調に店舗数を拡大していきました。

2000年代以降になると、国内市場だけでは成長の伸びしろが限られると考え、M&Aを通じたグローバル戦略を加速させ、欧州や北米へのチャレンジとして、海外ブランドとの契約やM&Aによるブランド取得も進めました。

また、2007年には経営の監督機能と事業の執行機能を分離するホールディングス体制に移行し、グループガバナンスの強化を図りました。

2010年代から今日までは、流通構造変化に合わせて、自社ECサイトを開設し、OMO戦略を加速、また、独自のファクトリーイノベーションにより、低価格・短納期を実現したオーダーメイドスーツの新事業『KASHIYAMA』ブランドの展開を開始し、現在も順調に拡大をしています。

2020年度には、コロナ禍により創業以来最大の危機に直面しましたが、グローバル事業構造改革を実施し、現在は2030年に向けた新たな事業の構築と、既存事業のさらなる成長に注力しており、まさに反転攻勢のタイミングにあります。

流通構造の変化も大きく、2008年、2018年頃と比べても明確で、かつては百貨店が売上の7割を占めていましたが、現在では、百貨店・ショッピングセンター・ECがそれぞれ約3割ずつという構成に変わっています。この流通変化に合わせて、ブランド開発も百貨店向けからショッピングセンター向け、さらには店舗を持たずにWEBを中心にマーケティングを行うブランド開発へとシフトしてきました。

また、ファッション以外の事業についても、ウェルネス領域を中心に拡大しています。
M&Aによって、大和やKOKOBUY(化粧品)、少し前ではクリエイティブヨーコ(ペット用品)といった企業群をグループ化し、商品やサービスの拡充、販路の拡大を図り、一定の成果が出てきております。

そのように事業が広がっていく中で、2024年9月27日にカジュアル衣料を中心に取り扱っている株式会社ウィゴーの株式を100%取得いたしました。このことにより、世代バランスの取れた顧客基盤になり、登録会員数は1,000万人近くとなりました。

今後は、会員基盤の拡充を進めながら、オンワード経済圏を構築し、「VISION2030」に向けた事業活動をさらに推進してまいります。

第二部:事業展開と財務戦略

志村
非常に詳しく事業と沿革についてお聞かせいただきありがとうございました。
特に注力されている、象徴的な取り組みをお伺いできますか。
吉田様
やはり当社の中核は「ファッション」と「ウェルネス」です。ファッションの領域では、流通変化に応じたブランド開発や、ものづくりの磨き込みを一層強化していくことが重要であると考えております。

最近、さまざまなメディアでも取り上げていただいておりますが、日本の四季そのものが変わりつつあり、「二季」に応じた定番品または機能性を持った商品づくりに特化しています。流通の変化、気候の変化、そして顧客の嗜好の変化に対応したファッションを、今後も提供してまいります。

また、先ほど申し上げたように、ウェルネス事業においても、販路の拡大や、海外展開を視野に入れた事業開発、業容の拡大を図っていきたいと考えております。
志村
その観点では、スピードや価値を買うということでM&Aもお考えでいらっしゃるのでしょうか。
吉田様
『VISION2030』の中でも明記しておりますが、中期経営計画である2026年までの3年間において、M&Aを含めた投資額として最大700億円を計画しております。

「WEGO」もその一環として位置づけておりますし、今後も積極的にM&Aを検討し、実行していきたいと考えております。

第三部:人財戦略と求める人物像

志村
ありがとうございます。
続いて、各部門でご活躍されている人財について、どのような特徴をお持ちの方が多いかお聞かせいただけますか。
吉田様
当社グループの特徴として、他社様に比べると、比較的まだ中途入社の方が多くはないといイメージです。最近はアルムナイという事で、一回転職してまた戻る方も増えて、人材の流動化が進んできた印象があります。

そのような中で当社の強みとも言えると思いますが、各部門で活躍されている方に共通していることは、ロイヤリティーが高い方、または当事者意識をもって能動的にアクションしている人だと思います。何かしらを発信する、提案する、危機感をもって変革することを厭わず、能動的に動くという人が、活躍していると思いますね。
志村
なるほど、ではさらに財務・経理部門における中途採用人財に求める人物像についてお聞かせいただけますか。
吉田様
財務経理部門としては、アントレプレナーシップがあることが望ましいように思っています。

今までの体制を振り返ると、企業サイズの割には若干縦割りになっていたように感じます。

これからの時代を考えますと、ファイナンス部門であるからこそ、会計、税務、開示といった専門機能のみならず、フロント側と強く連携し、新しいビジネスやプロジェクトを立ち上げるような取り組みが出来る人財が求められていると強く感じます。
志村
比較的プロアクティブで、ポジションに固執せずにビジネス全体に貢献しようとする姿勢を持つ方がフィットしやすいのでしょうか。
吉田様
オンワードに限らないですが、財務経理のポジションというのは、会社法、金融商品取引法であるとか、企業活動のすべての取引を、最終的には仕訳という簿記に置き換えて、財務諸表を作成し、開示するという、責任・義務があります。

一方で、フロントの方が財務経理に関してやらなければいけないことをスムーズにかつスマートに行うために、本業の方に集中してもらえるかを整えるサービス部門でもあるわけですから、そういったことを追求していくということに喜びを感じられるような方も、望ましいと考えています。

第四部:組織づくりと育成方針

志村
財務経理部門の方のバックグラウンドとして、他の職種から移動されてきた方、中途採用の方、もしくは専門的な知見ということで長く部門にいらっしゃる方、その3つぐらいのタイプの方がうまくチームを構成されていらっしゃるのでしょうか。
吉田様
そうですね。
フロントから移動してきた方、中途の方、最初から経理に配属されていた方の組み合わせですね。
志村
その中で、吉田取締役が管掌されている部門での組織づくりや人財育成について、今後取り組まれたいとお考えのことがあれば教えていただけますか。
吉田様
組織作りに関しては、総合的なバックオフィス人財をグループとして排出していきたいですね。
志村
もう少し詳しく伺うと、「総合的な」というのは、たとえば人事、情報システム、経営企画といった職種も含めたバックオフィス機能全般という意味でしょうか。
吉田様
そうですね。大きなサイズの企業はある程度縦割りになりやすい傾向があると思いますが、その中で専門性を高めて深めていくところと、大きくないサイズの企業においては、1社の中で総合的に、ファイナンス、総務、IT、HRそういったものも全部まとめて運営・管理していった方が効率性が高い、ということがあります。

専門性が高く、かつバックオフィス全般が運営できる、という人財は希少価値が高いと感じます。
志村
ありがとうございます。
それは新卒・中途いずれの採用形態においても、人財育成に挑戦される機会や、チャレンジングな実務ポジションへの登用があると理解しました。
吉田様
個人のバリューアップにつながると確信していますし、一方で、企業グループとしてもそうした人財が一人でも多く生まれることは非常に望ましいことです。

結果的に、それが日本のファッション業界への貢献にもつながると考えています。

ちょっと大きなことをいいすぎましたかね(笑)
志村
いえ、大変素晴らしいお考えだと感じました。ありがとうございます。
吉田様
バックオフィス側のマルチタスク人財ということになるのですけれども、少し深掘りすると関係会社で規模感はそんなに大きくない会社、その管理部門の責任者ポジションというのはニーズはあるのですが、現在ほとんどいないように感じます。

そのような経験をされている方は、転職市場にでにくい。 どこかにはいらっしゃるんでしょうけど、財務経理、人事、総務、システム、物流部門などの機能を満遍なく経験されたことのある方に、ほとんどお会いしたことがないです。

とすると、やはり、当社グループの中でそのためのローテーションを行い、人財育成するプログラムが重要だと感じます。
志村
なるほど。
中途採用も有効な手段の一つではありますが、長期的な視点で見れば、社内で育成プログラムを組むことで、10年後の組織としての成果につながる可能性も高いですね。

それが常態化していけば、やがて組織風土として定着し、その価値観に共感した方々が新たに入社し、さらに活性化するという循環も生まれそうです。
吉田様
そういう意味では、中途採用を今一生懸命やるのだけれど、加えて新卒っていうのは必要なんだなというと、最近感じています。

一定の年齢、一定の経験がある方の他社での経験値を中に入れるのも大事ですが、多様性っていう意味でも、新入社員の方がいて、必要なローテーションのプログラムをした結果、チームの健全性やカルチャーを後押しするようなメンバーになっていくという意味でも新卒も大事だと思います。

今仮に新卒で採用したとしても、5年か10年しないと実っていかないと思うので、その時には自分は担当していない可能性がありますが、それもひっくるめて組織的な、次の組織、次の世代につながる組織にすることが大事だと思います。このポジションになってその組織づくりが非常に大事だなと強く感じます。
志村
組織人事が専門の立場として、新卒採用は非常に有効な方法だと感じています。
丁寧に対話しながら採用プロセスを進められますし、企業愛のある方と出会える確率も高くなります。

一方で、新卒だけではカルチャーの硬直化の懸念がありますし、中途だけでは組織文化の醸成が難しい場合もある、「バランス」が非常に大切だと思います。
吉田様
そうですね。
どのような企業も発展的なステージであったり、変革的なステージであったりすると思います。そのような点でも、人財についても多様性・バランスが大切だと思います。

最終部:当社ソリューションの活用とご期待

志村
ありがとうございます。
ここまで、事業戦略から組織・人財育成に至るまで、幅広くお話を伺わせていただきました。

最後に、当社のソリューションについてお伺いします。
今回ご導入いただいた背景や、差し支えない範囲で感じておられることをお聞かせいただけますか。
吉田様
やはり、労働市場からの人財採用が厳しくて、それぞれの各部門がしっかり採用していくっていうことになるわけですけど、なかなか独自でやっていても、通常業務がありながら各部長が課長、また私が携わって丁寧な選考もなかなか容易ではないです。

向き合うこと、ノウハウとして蓄積するとか、即時の対応、専属的にそこにリソースをかけるのは大変です。

中途採用というものに対して一気に採用する時、緩やかに採用する時、色々ありますが、そのニーズに合わせて、そこを外部の方にサポートしてもらうというのは有効でした。
志村
ありがとうございます。
実際に当社ソリューションをご利用いただいて、中途採用における変化や効果などは感じられましたか。
吉田様
やはり明確に言えるのは、中途採用の応募者の質と人数が明らかに変わりました。
逆になぜなのかお伺いしたいです。
志村
ありがとうございます。
ご存じの通り、転職市場はかつてないほど加熱しています。
人手不足倒産や人員不足による休業が起きている時代において、人材採用は経営の最重要課題です。

その中で、原理原則である地道で丁寧な転職市場とのコミュニケーションや、求人ポジションの情報解像度を高めるだけでも、応募者の関心度は大きく変わります。
有料職業紹介会社の人材推薦の精度が上がり、結果として「質と数」の改善につながるのです。
吉田様
そう考えると内製化ができていて、十分なリソースやノウハウが蓄積されているのであれば、問題はないと思いますがなかなかそこまで専門人財を置けない、という現実問題もあるでしょう。

採用するとき、しないときの変化もあったりして、そういった観点でも採用サポートは有効な選択肢の1つだと思います。

実務支援に加えて、ノウハウの共有やアドバイス、指導的なサポートなどもお願いできるのですか。
志村
はい。
実は当社の本質的な提供価値は、経営者へのアドバイザーや人事部門育成の伴走支援にあります。実務代行は、その一部に過ぎません。
吉田様
そういう意味では、新卒もそうですし足りない機能があるときのフィットギャップを埋めるための1つの手段として、サポートをお願いするっていうのもまた有効な手段だと思います。
志村
他社様のご支援事例では、CHROの採用支援や育成支援、複数年にわたる人事部門への伴走支援なども行っています。最終的に、私が不要となり、組織として自走できる状態が理想だと考えています。
吉田様
人事採用や研修、評価報酬制度、または、M&Aした場合のPMIはどういうふうに整えるのか、客観的に見ながら整えるのは非常に難しいと思いますし、そのような人事部門への支援も有効ですね。
志村
貴重なご期待のお言葉を頂戴し、感謝申し上げます。
今後もパートナーとして、貴社組織と人財獲得に寄与できるよう尽力してまいります。

最後に、組織や人材面で課題をお持ちの企業の経営者に向けて、当社ソリューションをどのようにご紹介いただけそうでしょうか。
吉田様
今までお話したことの繰り返しですが、人材採用であるとか人事面で何か足りない、というときに大手コンサル会社ではないフットワークの軽さやニーズに合わせた柔軟性のあるサービスがあるので、それはお願いしやすいのではないでしょうか。

例えば、志村さん自身が持たれているようビジネスのバックグラウンドを考えたときに、小規模と大規模のいずれの企業だとしても対応できるので、当社のような複数のグループ会社もいいと思いますし、1社単独ですごく歴史のある会社にもソリューションをお持ちでいらっしゃるし幅広な企業に向いていらっしゃるんじゃないかと感じます。
志村
温かいお言葉、誠にありがとうございました。
本日はお忙しいところ、貴重なお時間をいただき、心より感謝申し上げます。

プロフィール

オンワードホールディングス株式会社 取締役 財務・経理・IR担当、戦略企画室長
吉田 昌平様
【会社概要】
商号:株式会社オンワードホールディングス(8016)
HP: https://www.onward-hd.co.jp/
本社:東京都中央区日本橋3丁目10番5号 オンワードパークビルディング
代表者:代表取締役社長 保元道宣
創業:1927年(昭和2年)
上場:1960年(昭和35年)
事業内容:純粋持株会社としての、ファッション領域、ウェルネス領域、コーポレートデザイン領域における国内事業、海外事業を営む傘下関係会社の経営管理およびそれに附帯する業務
売上高:<連結>2,083億93百万円(2025年2月期)
従業員数:<連結>6,253名(2025年2月期)

【ご経歴】
2001年4月 株式会社アクティー二十一入社
2015年3月 株式会社オンワードグローバルファッション入社同社管理部長
2017年3月 株式会社オンワードホールディングス経理・IR部長
2020年3月 同社経理シェアードサービスDiv.長
2024年3月 同社執行役員財務・経理・IR室長 株式会社オンワード樫山執行役員
2024年5月 同社取締役財務・経理・IR担当 株式会社オンワード樫山取締役執行役員

INTERVIEWインタビュー

お取引を頂いている企業様に、当社ソリューションのエグゼクティブコーチング(マネジメント向けビジネスコーチ)や幹部人材採用(ヘッドハンティング)、幹部育成計画、組織人事課題を横断的に実務対応する伴走型支援の、感想や振り返りのインタビューを掲載しております。

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